※本記事はあくまで参考として私見を述べたものであり、実際の投資や資産運用については、ご自身の判断で行って下さい。
新NISAがスタートしてしばらく経ちましたね。
これまでは主に長期間積み立てを行う時間分散投資に着目して記事を書いてきました。
積立期間の長さ(20年など)を強調すると、定年や再雇用上限・年金受給年齢となることの多い65歳までの時間が短い50歳台の方にとっては、NISAでの積立はあまり有効でないのか、という疑問が生じます。
本稿では、50歳台でのNISA積立の活用法について検討してみます。
例として、55歳の会社員の方をイメージして、20年間75歳まで運用することで考えてみます。
会社員の方ですので、65歳定年時に退職金1500万円が支給されるものとします。
〇積立期間 : 20年
〇積立額 : 月4.5万円、年54万円(積立投資をしない場合は預金に加算)
〇積立利回り : 6%(外国株を含む投資信託をイメージ)
(※実際の利回りが6%をクリアできるかにはリスクがありますのでご注意下さい)
〇65歳時退職金 : 1500万円(65歳時に銀行預金に加算)
〇積立資金 : 65歳までは給与から積立、65歳以降は銀行預金から充当
〇65歳以降は公的年金を受給するが、銀行預金から月5万円(年間60万円)を取り崩す
※計算の簡便化のため、月額ではなく年額で計算します
※計算には各種係数を用いていますが、詳細は捨象します
【計算例1:NISAで積立せず銀行預金とする場合(年利1%運用)】
①銀行預金 10年後 1500万円(退職金)
・年間60万円の生活費取り崩しに必要な額 568万円/10年
20年後 1029万円(1%で運用)
②預金増加分(55~65歳) ⇒ 10年後 565万円(年54万円を1%で運用)
20年後 624万円(565万円を10年間1%で運用)
③計 20年後 1653万円
【計算例2:NISAで積立投資をする場合(年利6%運用+銀行預金1%)】
①銀行預金 10年後 1500万円(退職金)
・年間60万円の生活費取り崩しに必要な額 568万円/10年
・年間54万円の積立に必要な額 511万円/10年
20年後 465万円(1%で運用)
②積立投資 20年後 1986万円(年額54万円を6%で20年運用)
③計 20年後 2451万円
上記のとおり、75歳時点の資産額に約800万円の差が生じます。年6%運用の積立投資を20年行っている結果こうなるのですが、重要なポイントは、「退職金を分散投資で投資している」ということです。
積立投資の原資は1080万円(54万円×20年)で、退職金額と75歳までの10年間の取り崩し原資568万円を足すと、退職金とまずまず近い水準となります(少し多いでしょうか)。
退職金という大きな一時金収入については、投資初心者が一括投資することにはリスクがあります。退職金が支給されることが見えてきた年代には、退職金の受給を前提にして、それを退職前後で分散投資する意図で積立する、という考えもあるのではないかと思います。
なお、この後75歳から20年間にわたり、生活費の補填として年間60万円取り崩す場合、銀行預金金利を1%として計算すると、必要な原資は約1083万円です。
銀行預金で運用する前提の計算例1でも不足はしませんが、旅行等のレジャーや、入院・介護・自宅のリフォーム等前提にない資金が必要になる場合、インフレリスク他、さまざまな事象を考えて、もう少し余裕が欲しいと思われる場合は、リスクを取った上での運用も考えてもよいと思われます。
リスクを取る運用を行う際に、リスクを下げるためのポイントは、長期分散投資です。時間を味方にするため、やると決めたらできるだけ早くスタートする方が有利となります。
みなさまの資産形成に、本稿が参考になれば幸いです。