老後資金貯蓄目標額と積立設定額のシミュレーション(NISA活用その2)

※本記事はあくまで参考として私見を述べたものであり、実際の投資や資産運用については、ご自身の判断で行って下さい。

新NISAがスタートしてしばらく経ちました。
個人的に(=商売ではなく)、NISAの始め方などの相談を受けることがありますが、「いくらくらい投資に回せばよいか」ということもよく聞かれる項目です。

“投資は初めて”という方には、慣れることが大事なので、「まずは(ランチ1回程度の)少額からでもよいので、毎月の積立投資を始めましょう。慣れたら生活に支障がない範囲で増額しましょう」というようなアドバイスをしています。他の記事に書いたとおり、まずは早く始めることが時間分散の観点から重要だと思います。

では、慣れてきたところで、毎月いくら積立すればよいのか、について考えてみます。
目標額の設定においては、「1.いつまでに」、「2.いくら」貯めるのか、という整理が必要です。今回は、老後資金をイメージして、「①65歳までの20年に」、「②2000万円」貯めるシミュレーションをしたいと思います。
 ※若年の方には、①20年後に、②住宅取得の頭金として2000万円、というような読み方をしていただければ一定程度参考になると思います。

前提としている「②2000万円」ですが、2019年に金融庁のWGが提起した「老後2000万円問題」から仮置きしています。簡単に言うと、「リタイアして公的年金等を受給して暮らしていくとしたときに、公的年金だけでは計算上不足するので、2000万円くらい用意しましょう!」という内容です。
この2000万円が各人・各家庭において実際にいくらに相当するかは、家族構成や生活水準によって異なるものですし、今後のインフレなどによっても金額に変動が出てくるものですので、本来は定期的に各人・家庭ごとに見直しをすべきものだと私は考えます。

考え方の要点は以下のとおりですので、必要によりご自身にあてはめて概算してみて下さい。(出典:生命保険文化センター「生活保障に関する調査」、厚生労働省)
〇支出額  : ・最低日常生活費(夫婦2人)     約23万円(月額)
        ・ゆとりある老後生活費(夫婦2人)  約38万円(月額)
〇公的年金 : ・夫婦2人モデル年金        約23万円(月額)
〇計算期間 : ・30年(老後の期間)

以上の前提で考えると、最低日常生活費は公的年金で充当できるとして、どのくらいの金額を「ゆとり」として計算するか、により不足額が決定されます。
不足額を月額5万円とすると、30年(360ヶ月)で、1800万円となりますし、月額15万円とすると、5400万円となります。

今回は、45歳から65歳までの20年で、全く貯蓄なしの状態から2000万円を貯めるため場合のシミュレーションをしてみます。

〇積立期間 : 20年
〇目標額  : 2000万円
〇利回り  : 6%(外国株を含む投資信託をイメージ)
 (※実際の利回りが6%をクリアできるかにはリスクがありますのでご注意下さい)

計算には、「減債基金係数」を使用します。
 年間積立額 = 2000 × 0.0272 = 54.4万円 … 月額 約4.5万円
(実際には月々の積立となると思いますが、計算の簡便化のために年額を算出し月額換算しています)

以上のとおり、毎月NISAで4万5千円の積み立てを行えば、一定の前提で老後2000万円問題をクリアできることになります(くどいですが利回り6%をクリアする前提です)。

上記を基本として、各人・各家庭の状況に応じてバリエーションを考えることになりますが、もし「65歳まで20年未満である」、「生活水準が高い」、「2000万円では足りない」といったような場合は、選択肢として「長く働く」「生活水準を見直す」「積立額を増やす」そして「年金を繰下げ受給する」といった方法がありますので、生活設計検討の参考にして下さい。

繰り返しになりますが、投資にはリスクを伴います。
一方で、時間を味方につけた長期の複利運用こそ、保有資産額に関わりなく誰にでも公平に与えられた資産形成のツールです。むしろ、高齢の富裕層の方より若年の資産形成期の方の方が長期間運用できる面では有利とも言えます。
みなさまの資産形成に、本稿が参考になれば幸いです。

注:高齢世帯の収入・支出額(夫婦2人および単身世帯)については、総務省「家計調査」にも調査結果が公表されていますので必要によりあわせてご確認下さい。

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