キャリアコンサルタント資格について(その2)

キャリアコンサルタント(「CC」と記述します)資格の認知度向上に向けて、ささやかながら貢献すべく(当社の身の丈にはあいませんが)、この資格の活用場面について、私見を述べたいと思います。

前回、国家資格キャリアコンサルタント資格の取り方について、養成講座を修了して試験を受けるというのが一般的というお話をしました。

養成講座で学ぶことは、面談技能(カウンセリングスキル)のほかに、キャリアやカウンセリングに関連する理論、各種アセスメントツールの知識、その他書ききれないほど多岐にわたります。

人事関係者やラインマネージャーの方はもちろん、こうした知見を素養として身につけておくことは、全てのビジネスパーソンにとって有意義なものであると私は考えますので、きっかけがあれば受講を検討するのもよろしいかと思います。

「きっかけがあれば受講を検討するのもよろしいかと」というのは、歯切れが悪い言い方ですが、私はこの資格の取得については、他の資格に比べてより「めぐりあわせ」「ご縁」「タイミング」といったようなものが大事なように感じています。

そのきっかけがどのようなもので、そのタイミングがいつなのか、それはよく分かりませんが、
とにかく、「今かな」とか「やろう」と感じたタイミングで検討することが大事かな、と思います。

私は、CC資格の取得を通じて身につけた能力の「活用」と、CC資格保有者としての「活動」については、分けて考える必要があると考えています。

前回の記事でご紹介したとおり、CC資格保有者は、「企業、需給調整機関(ハローワーク等)、教育機関、若者自立支援機関など幅広い分野で活躍」しているとのことであり、資格取得を通じ、様々なビジネスシーンで「活用」できる能力が身につくと考えています。

一方で、企業内での資格保有者としての「活動」については、一定の限界があるのではないかと考えます。

キャリアコンサルタント倫理綱領(キャリアコンサルティング協議会版)には、CC資格保有者として相談者と面談する場合、守秘義務を負った上で、相談者の利益を第一に考えなければならないことが定められています。また、相談者との多重関係を避けるようにしなければならないという制約もあります。

こうした制約を前提に考えると、人事部門の担当者が人事施策の一環として社員と面談を行う場合には、面談の目的はあくまでその人事施策の実現にあり、相談者の利益を第一に考えることは難しいため、CC資格保有者としての面談ではないと位置付けられます。極端な例ですが、リストラでの退職勧奨面談などを想像すると分かりやすいかも知れません。

また、上司が部下と面談するにあたり、CC資格保有者としての知見や能力を「活用」することはできると思いますが、上司と部下は文字どおり上下関係にあり、CCと相談者という関係にはなれないと考えます(多重関係となってしまうため)。
加えて、上司としては、組織の目標達成のために部下と面談するという側面も強くあると考えられ、相談者の利益を第一にはできません。

このように、企業内での「CC資格保有者としての面談」には、制約や難しい面があると考えます。

しかし逆に考えると、人事部門などに設置したある特定のCCについて、CCの倫理綱領に従って行動することを認めればこの問題は解決します。

倫理綱領に従って行動する、ということは、相談者への守秘義務を優先し組織内での報告を行わないことがある、ということを意味しますし、相談者の利益を第一に考えるということは、例えば退職するかどうかの相談に来た社員に対して、会社にその社員を引き止めたいという意向があったとしても、相談者の利益や意向が第一であり、引き止め面談のようなことはしないこととなります。
また、退職意思について、相談者が秘密保持を望んだ場合は、会社に報告しないこととなります。

こういった独立した専門職CCの設置に、企業としてどの程度ニーズがあるかはさておき、CCの企業内活用についての更なる議論のためには、まずはその土台として、冒頭に申し上げたとおり、CCに関する認知度を上げることが必要かと思います。

微力ながら引き続き努力していきたいと考えています。

※CCとして社員と面談する際に、「面談内容を会社に報告しますのでその前提でお話し下さい」と断りを入れて行った事例について、そのCCの方が書かれた文章を読んだことがあります。そういったやり方もあるのかも知れませんが、ここでは一旦倫理綱領を厳密に解釈して問題点等を整理しています。

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